本文を読む前に、みんなで話し合おう。
1.古い家の写真を見てください。写真の下の方に四角いものがあります。これは、「いろり 」というものですが、どんな家にあって、何に使われると思いますか。http://www.db.fks.ed.jp/pic/20045.001/images/20045.001.00112.jpg
2.19世紀末 の日本では、何%ぐらいの子供が中学校に進学できたと思いますか。
3.何かに成功 するためには、どんなことが必要だと思いますか。
1 やけど
農家では田植え が始まった。
一年中で最も多忙な 時期である。
一軒 の小さな家の戸口 に、不安 げに 立っていた女の子が、母親の姿 を見つけて駆け出してきた 。
「お母さん。お帰りなさい。」
「よく留守番をしてくれた ね。いい子だ。いい子だ。清作 (せいさく)は。」
「よく眠っている よ。ねえ 、お母さん、おなかすいたよ。」
「よしよし 、今すぐ用意してあげるからね。」
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疲れた足を 引きずる ようにして 、田んぼ から帰って来た母は、一休みする 暇もなく 、夕御飯 の支度 にとりかかった 。
いろり のそばでは、かわいい赤ん坊 が、すやすやと 眠っていた 。
母は、その寝顔 を見ると、安心して 、裏の畑へ野菜を取りに行った。
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もう、うす暗く なった畑で、母は懸命に 野菜を取っていた。
すると 、突然赤ん坊 の激しい 泣き声 が聞こえてきた。
大急ぎで 家に駆け戻ってみたら、 家中に いろり の灰 が舞い上がっていた 。
眠っていた はずの 赤ん坊 が、いつはい出してきた のか、いろり に落ちていたのだ。
夢中で 抱き上げた 時には、もう赤ん坊 の左手が真っ赤に 焼けただれていた 。
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これは、野口(のぐち)英世(ひでよ) が二つの時のことである。
英世は、小さい時の名前を清作 といった。
野口清作 は、1876年(明治9年)に、福島県 の猪苗代湖 (いなわしろこ)の近くにある小さな農村 に生まれた。
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